学校教育の情報化に関する懇談会第5回のメモ
文科省が主催する、学校教育の情報化に関する懇談会の第5回が6/9に開催されました。
この懇談会は、世界的なICT化の流れに対して学校教育へどう適用すべきか、情報化時代の教育はどうあるべきか、ということについて議論されているものです。
特筆すべきは、熟議カケアイという文科省が運営する掲示板サイトで、一般の人(保護者、研究者、教員など多岐にわたる)が議論を行っていることですが、(学校教育のICT化については「ICTを活用した21世紀にふさわしい学校や学びとはどうあるべきか」で議論されていました。現在は書き込みできません。)また、第5回を始めとする議論の動画が公開されています。時代の流れを生かした画期的な試みと言えます。
更に画期的なのが、このカケアイで議論された内容というのを委員の方々がチェックしていて、議論のネタにする。そして、文科省の方々がまとめて懇談会の場で配布し、意見として吸い上げようという姿勢が感じられる点です。もちろん、これが最終的のどれだけ残るか/減衰するかは見守っていかなければなりません。
第5回で個人的に興味深い意見としては、横浜国立大の野中氏による「持続可能なシステム構築のため、どういう学校でも使える、長期にわたっても効果のあることを実証すべき。目標や成果も学校ごとでバラバラなときにどう評価するか評価方法の検討を」というものがありました。
教育の評価は社会への貢献などで図ろうとすると十年単位でしか効果が見られないのが辛いところです。かといって、単純な試験の点数に最適化するのはもってのほかと思います。そうした中で、いかに多様な価値観で教育を行っていき、それを評価するのか、これが重要になってくるでしょう。裏返せば、「学校で学ぶべきことはなんなのか?」ということを考えていくことに他ならないと思います。懇談会を聞いていると、しばしば、学習者中心主義的な考え方がこれからの教育に重要となってくる、というような印象を受けます。
教育に関しては素人なのですが、どのような教育が望ましいのか考え続けていきたいと思います。また、是非ともお忙しい現場の小中高の先生にも、こういう議論があるんだということが伝われば、と思います。きっとベストプラクティスだけでなく、現場の様々な声、感覚がこれからの教育をよりよくする糧となると思います。PISA型の学力や21世紀型スキルなど、今の教育の現場とはもしかしたら直接は繋がらないかも知れない、けれどもパラダイムシフトが起こりうる考え方をチェックしていくことが重要なのかも知れないと思います。
以下に個人的ではありますが、議論を見ながら取ったメモを残しておきます。詳細は動画をご覧ください。
第5回で主に議論された点は、
- 子供たちにすべき「情報教育」はどのようなもので、どうすべきか
- 校務のICT化について
- 予算の枠組みについて ということが中心に議論された。
1つめの情報教育に関してまとめると、以下の3つの観点がある。
1)使い方を教えるコンピュータリテラシ教育
2)アルゴリズムやOSの仕組みなど情報の技術の中身についての教育
3)情報を処理(収集、選択、発表)するための教育
現状の特に高校の情報科の教育では1)に終始してしまっているが、今後は21世
紀型スキルを含めて3)について教育を行っていくべきだとの意見が多く見られ
た。3)の実現方法については、まずは小中学校にも情報科の教科を設けて1)
と共に小学校から一貫して教えていくべきだ、という意見と、国語や数学、社会
など現在ある教科に組み入れるべき、そのために教員養成課程から変えていくべ
きだという意見が対立した。
また、校務のICT化に関しては2点NIIの新井氏から知見の発表があった。
・教育委員会の専用回線(24Mbps)を各校が分配して利用するため、一つの学校がネットを一斉に利用すると他の学校が使えないなど、インターネットコンテンツがまともに利用できない。
・教育クラウドでの校務支援に際し、成績票などの帳票の様式の違うため全ての統一化は困難。クラウドとローカルで行うことを切り分け、クラウド側はオープンな形式にして持続可能なシステムにすべき。
予算については、国主導で推進していかないと全国的に進まないという点についての意見が相次いだ。